日別アーカイブ: 2023年6月4日

6月の花のコース「マリーゴールド」のポロ葱と根セロリのポタージュ・シャンパーニュ風

今月の月替わりの花のコースでは、「ポタージュ・シャンパーニュ風」をお召し上がりいただけます。このポタージュは、1902年初版の「オーギュスト・エスコフィエ料理の手引き」において、スペシャルポタージュとして掲載されているもの。スペシャル、と銘打たれるだけあって、フランス料理らしさが存分に発揮されている料理となっております。下記にその作り方を綴りましたので、ご興味のある方はご覧ください。

Potage à la Champenoise
ポロ葱と根セロリのポタージュ・シャンパーニュ風 /  ペンジャ白胡椒:カメルーン

①ポタージュ・ションパーニュ風の作り方
クレーム・パルモンティエ(②)15dL と根セロリ のポタージュ・クレーム(④と⑥)2.5dL を混ぜ合わせる。 にんじんとセロリ  のブリュノワーズ* 2 .5 dL を加える。

では②クレームパルモンティエとは?
ピュレ・パルモンティエ(③)をポタージュ・クレーム(④) にする。

では③ピュレ・パルモンティエとは?
ポワロー 3 の白い部分をエマンセ*にしてバターで色付かないよう炒める。くし切りにしたオロンド種のじゃがいも 750 g と白いコンソメ(⑤)1 L を加え、強火で火を通す。じゃがいもに火が通ったらすぐ に泡立て器ですり潰しす。布で漉し、生クリーム 2 1/2 dL でちょうどいい濃さにして、バターを加えて 仕上げる。

④ポタージュ・クレームとは?
クレームの作り方はヴルテと同じだが、以下の点が違う。
1° ヴルテではなく薄いベシャメルソースをベースとして用いる。牛乳 1 L あたり白いルー 100 g で作る。
2° 多くの場合、仕上げに濃さを調節する際、コンソメ ではなく牛乳を加える。
材料比率……ヴルテと同様。つまり、ベシャメルはポタージュ全体の半量、ポタージュの性格を決め るピュレ(⑥)が 1/4、濃さを整えるための白いコンソメまたは牛乳が 1/4(仕上げに加える生クリームもこれ に含める)。
作業……主素材が鶏、ジビエ、野菜、甲殻類いずれの場合も、作業はヴルテの項で示したのと同じ。 浮き実(ガルニテュール)……ヴルテの項で示したように、クレームの主材料を加えること。
仕上げ……提供直前に、ポタージュ 1 L あたり 2 dL の生クリームを加える。
ヴルテもクレームもデプイエ*は行なわない。ポタージュの濃さを整えたら、沸騰寸前まで温め、湯煎にかけて保温しておく。表面が乾かないようバターのかけら数片を載せる。ヴルテは、供する 前に卵黄、生クリーム、バターを加えて仕上げる。クレームの仕上げは供する前に生クリームだけを加 える。

⑤白いコンソメとは?
主素材……牛赤身肉 4 kg と牛骨付きすね肉 3 kg。
香味素材……にんじん 1.1 kg ( 5~6 本)、かぶ 900 g( 5~6 ヶ)、ポワロー 200 g、パースニップ1)200 g、玉ねぎ (中) 2 ヶ( 200 g)、クローブ 3 本、にんにく 3 片( 20 g)、セロリ 120 g。
加える液体……水 14 L。
調味料……粗塩 70 g。
加熱時間……5 時間。

作り方に関する補足……コンソメ・サンプルを作る際、一般的には火入れに 5 時間かけることになっている。肉汁を抽出するには充分な時間である。 けれども骨の組織を壊して可溶性物質を確実に抽出するには 5 時間では絶対に足りない。骨から可溶性物質を抽出することはとても重要だが、そのためには弱火で 12 ~ 15 時間加熱する必要がある。 だからグランド・キュイジーヌでは、粗く砕いた骨を 12 時間以上加熱して第 1 のコンソメをとるようになってきている。
この第 1 のコンソメを第 2 のコンソメをとる鍋に注ぐ。この鍋で肉を約 4 時間、すなわち肉を加熱するのに最低限必要な時間、火にかける。
肉を野菜を塊のままではなく細かく刻めば、2 つめの作業時間をさらに短かくすることも可能だ。その場合は、通常のクラリフィエと同様の作業となる。

⑥根セロリのピュレとは?
セロリのピュレ を参考にして。
セロリ  の白い部分 750 g をエマンセ*、ブロンシール*する。しっかり湯ぎりする。バターでエチュヴェ*、白いコンソメ [p.147] 1 1/2 L を注ぐ。
リエゾン*にじゃがいも 350 g を加える。ゆっくり火を通す。布で漉し、提供直前にバターを加える。(原注)つなぎに使用するじゃがいもは米 150 g に置き換えてもよい。

「オーギュスト・エスコフィエ 料理の手引き」五島学訳より。

ご覧の通り、②〜⑥を全て順序立てて準備してようやく①が出来上がる、そんなポタージュです。見た目はシンプルですし、味もわかりやすく美味しい!とはならないかもしれませんが、数種の香りを感じながらもまとまりのある、じんわりと染み入る美味しさだと思います。ポタージュは通常3品目にしておりますが、今回は他料理の味の影響を受けないよう一皿目に配しました。フラットな舌でじっくり味わってみてください。

(1200ページに及ぶエスコフィエの文章に散らばる①〜⑦を探し参照しながらの作業、これだけでも大変な労力ですが、五島先生がまとめてくださったエスコフィエ電子版でとても時間の短縮になりました。この場を借りまして心よりの感謝を申し上げます。五島先生ありがとうございます!)